ひんにゅーセンチメンタル「半熟少女」
2007年03月19日 18:44
(しばた@OHPのオススメ漫画)
今回紹介する「半熟少女」は、あまとりあ社から出ている貧乳系アンソロジー「貧乳××」シリーズ(××の部分は毎回変わる)に掲載された作品を集めた単行本だ。ということからも分かるとおり、収録されているお話は、つるぺた系な女の子が登場するエッチ漫画ばかり。大庭佳文はこれが初単行本だが、キュートな絵柄で、なかなか気持ちの良い作品を描いている。
大庭佳文の作風でまずパッと目につくのが、キュートでアッサリした口当たりの良い絵柄。最近のエロ漫画の中ではかなり薄味な部類で、局部の描き込みとかもつるんとしている。実用度は高めではないが、品の良い作風なので「濃すぎるのはちょっと……」という人にとっては読みやすいだろう。
そして読んでみて「いいなあ」と思うのが、キャラクター、とくに女の子たちの心理描写が丁寧なこと。女の子たちの、ちょっとエッチに興味がある気持ち、友達と自分をつい比べちゃう気持ち、芽生えかけの恋心などなどをきちんと描写している。これはガッツンガッツンやりまくるハードコア系のエロや、主人公が理由もないのにモテまくるベタな萌え系の作品にはない細やかさだ。
「半熟少女」 大庭佳文 久保書店
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「みなかわる」より。Hなシーンでなくて申し訳ないが、こういう登場人物の気持ちを丁寧に描こうとしてるシーンが多くてイイ感じなのだ(156ページ) |
今回の収録作品は、登場人物が共通したシリーズはあるものの、基本的にはどれも一話完結で独立して読める。「佐藤敬子さんは○○な人ですけど」は、浮気性な友達を持つ女の子が、浮気されてしまった友達の彼氏を慰めているうちにエッチな雰囲気になっちゃうというお話だが、二人の間で板挟みになっている主人公少女の心情描写がうまくて単純なエッチ漫画には終わっていない。「SUGAR BABY LOVE」は親友女子に恋してしまった女の子の悩める心のうちを切々と綴る。「みなかわる」では、エッチを経験したことで変化していく少年少女カップルの気持ちを爽やかに描き出す。その他のお話も、ほのぼのした雰囲気の中で、エッチをからめつつ、しみじみくる何かを感じさせてくれる作品が多い。
まあ「これが少女のリアルか」といわれたら「それは違う」のだけれども、いくぶんかのファンタジー・願望を含ませつつ、女の子の気持ちもきちんと描いていこうとする姿勢には好感が持てる。派手な作風ではなく、つるぺたな胸と同様に萌え要素の押し出し方も抑えめではあるが、その慎ましやかさ、控えめなところがかえって好ましい。作画的には初単行本ということもあってまだこなれてなかったり、背景などの描き込みも不足気味だったりはするのだけれども、全体的な雰囲気の良さ、丁寧さは買える。というわけで今後への期待も込めてオススメしておきます。