熱き血潮がギザ燃ゆる「仮面ライダーをつくった男たち」
2007年04月27日 08:44
(しばた@OHPのオススメ漫画)
今回紹介する「仮面ライダーをつくった男たち」は、そのタイトルどおり、国民的ヒーロー番組である「仮面ライダー」の製作に関わった人々を描いた実録ストーリーだ。今では日本人なら知らぬ者とてない超有名作品である「仮面ライダー」だが、その誕生の陰には、子供たちに勇気と正義を伝える英雄を作ろうと夢見た人々のいくつものドラマがあった。本作ではそんな男たちのアツい生き様が描れていく。
この作品では、まず前半で「仮面ライダー」立ち上げの立役者となったプロデューサー・平山亨、後半では「仮面ライダー」のアクションを担当した殺陣師集団「大野剣友会」の面々の活躍が描かれる。登場するのはどちらもいい年した男たちばかりだが、その様子はこれがもう実にアツい。読んでいると読んでいるほうにまでその熱がうつってきて、思わず歯を食いしばったり、思わず涙ぐんだりしてしまう。
特に自分の手がけた番組にすぐのめり込んで、涙まで流してしまうことから「泣き虫プロデューサー」という異名を持つ、平山亨のエピソードは素晴らしい。東映の製作所関連事業室室長・内田有作の誘いに乗って、番組の立ち上げのため奔走した平山亨は、石ノ森章太郎(当時は石森章太郎)のデザインしたヒーローに惚れ込んで、どんどん仕事にのめり込んでいく。まるで子供のように仮面ライダーの魅力を語る平山亨の熱意は、やがて周囲にも伝染し、人々を衝き動かしていくこととなる。「仮面ライダー」という番組を支えた人々の熱い息吹を描き出した物語はこの上なくアツくて、ものすごくジーンと来る。そして平山亨が、スタッフたちを前にして彼の思い描くヒーロー像を語るクライマックスシーンでは、熱いモノが次から次へとこみ上げてきてしまってたまらない。問答無用で泣けるのだ。
「仮面ライダーをつくった男たち」 取材・脚本:小田克己+画:村枝賢一 講談社
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バイク事故で負傷した本郷猛(藤岡弘)の代役を立てようという意見に対し、熱弁を振るう「泣き虫プロデューサー」平山亨。彼らの情熱が「仮面ライダー」を国民的番組へと押し上げた(52ページ) |
大野剣友会編も負けず劣らずアツい。仮面ライダーの中で実際にアクションをしつつも、殺陣師という職業柄、顔を出すことは許されない。ごく一部のスタッフ以外には存在を知られることもなく、人々の称賛を浴びることもない陰の存在ながら、仮面ライダーをより格好良く見せ、子供たちを喜ばせるために、肉体を鍛錬し、最高のアクションを見せようとする男たちの心意気に心打たれる。普通の役者とは違い、武骨で不器用だけれども、そういう男たちにしかない凄みを感じさせてくれる。
漫画の執筆を担当した村枝賢一も熱血漫画では定評のある作家だ。「仮面ライダーSPIRITS」の連載も手がけているほどのライダー好きでもあるだけに、仮面ライダーに対する思い入れ、それを作った人々たちに対するリスペクトが、作品からもビシビシと伝わってくる。本作は、実際の制作に携わった人々のアツさだけでなく、漫画を担当した作者のアツさまで加わり、相乗効果でとにかく燃える作品に仕上がっている。情熱あふれる文句なしの良作なので、ライダー好きならずともぜひ手にとっていただきたい。