星クン、ハァハァしてよかとですか?「水の色 銀の月」
2006年07月26日 17:42
(しばた@OHPのオススメ漫画)
今回紹介する「水の色 銀の月」は、兄と妹の禁断の恋をじっくりねっちり描き、アニメ化もされて話題を呼んだ「恋風」の作者、吉田基已の最新作だ。といっても「水の色 銀の月」自体は「恋風」より前に描かれた作者のデビュー作でもある「水と銀」の続編にあたり、今回の単行本化に際しても、第1巻収録分については2000年7月に単行本化された「水と銀」の内容をそのまま再録しており、第2巻分からが新作という形になっている。
「水と銀」は、留年を繰り返している美大生・亜藤森と、彼が街で偶然出会った高校1年生のちっちゃな女の子・桐生星(星クン)が知り合い、お互いに惹かれ合って恋に落ちていく様子を描いた青春ラブストーリー。そして「水の色 銀の月」は、亜藤と星、それから二人の周辺の人々のそれぞれの恋心を描いていく、連作形式のお話となっている。
■「水の色 銀の月」1巻~ 吉田基已 講談社
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■1コマめのちっこい女の子が星クン。2コマめに出てくる男が9歳も違うクセして星クンの心をまんまとゲットした亜藤。実に妬ましい(第2巻51ページ)
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「恋風」において吉田基已は、強烈にかわいい妹・七夏を登場させて、全国の妹大好き人間たちを悶絶させたものだが、本作のヒロインである星クンもなかなかにかわいらしい。高校1年生ながら、子供のようにちんまりしていていつも目立たぬようにしている女の子。こんな娘さんと亜藤が恋に落ち、結ばれていくラブストーリーを、この作品は実に切なくて暖かく描き出している。
「水の色 銀の月」ではこの二人を取り巻く登場人物たちのエピソードが中心となるが、こちらもまた甘くてほろ苦くて、若者ならではの青臭さが強烈ににじみ出ている。その繊細な心情描写と、作画の美しさは特筆モノ。
ところで「恋風」は一般誌連載作品ながらも、兄と妹の恋愛を描き、兄と妹が最終的には肉体関係を持ったりするなど、かなり生臭いところまで突っ込んだ作品だったが、それはこの「水の色 銀の月」シリーズにも共通する部分がある。そもそも亜藤と星クンは年齢が9歳離れているけど、亜藤はけっこう女には手が早く、なんだか朴訥そうな顔をしていながら星クンとも早々にヤッちゃう。また亜藤はヌボーッとした顔をした三枚目キャラながらも女にはやたらモテるし、手も早かったりする。正直いってちょいとムカつくキャラなのだが、そんな亜藤が、無垢でピュアな星クンをゲットしたかと思うと、ちょっとした背徳感やジェラシーみたいなものさえ感じてしまう。
まあ絵はきれいで叙情的ではあるのだけど、単純にラブラブな青春恋愛ストーリーってわけでもないんで、そこらへんは覚悟のうえで読んでいただければと思います。
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