封印された過去に迫る青春ラブストーリー「SWWEEET」
2006年09月15日 14:05
(しばた@OHPのオススメ漫画)
いつもは萌えだのエロだのといった作品を中心に紹介しているこのコーナーだけど、今回はマジな作品を一つ。本作「SWWEEET」は、月刊IKKI誌上で連載された、青くてほろ苦く、そしてガツンとくるインパクトのある青春ラブストーリーの秀作だ。
本作の主人公・林ツトムはごく普通の14歳の中学生。彼にはツトムという双子の弟がいて、子供のころは2人の幼なじみの少女・遠山さくらとともにずっと一緒に仲良く過ごしていたが、10歳のときにツトムは失踪してしまう。残されたススムとさくらは、ツトムの記憶は封印したまま成長するが、封印した記憶によってもたらされた心の歪みは2人の中でどんどん大きくなる。そしてススムはやがて、鏡の中にいなくなったはずのツトムの姿を見るようになり、そのツトムに焚き付けられたこともあって、さくらとともに、再びツトムの行方を探すことに向き合っていくことになる。
このように、本作ではススムとさくらの二人が、ツトムの行方を探し求めていく過程が描かれていくのだけど、物語展開はかなりドラマチック。まず冒頭のシーンからしてかなりインパクトがある。疎遠にしているうちに学校でイジメを受けるようになったさくらを助けようとして返り討ちにあったツトムが、イジメグループによってさくらとセックスさせられるなど、痛々しいシーンが描かれ、いきなり物語に引き込まれる。その後のススムとさくらによるツトム探しも驚きの連続。ススムとさくらの距離が縮まっていくとともに、2人が目を背け、封印してきた失踪の日の記憶が少しずつよみがえってくる様子は緊張感バツグン。真相に近づくにつれお話が加速していき、2人の気持ちがぐらぐら揺さぶられていく姿もテンションがとても高く、読者をグイグイ引っ張っていく。
■「SWWEEET」全2巻 青山景 小学館
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■ススムとさくらはツトムの行方を追い求めていく。二人の過去に何があったのか、その真相はいかに?(第1巻171ページ)
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2人がたどりついた真実は苦くて痛いものだったが、しかし本作の読後感はけして苦いだけではなく、さわやかで甘くもある。過去と真剣に向き合ったことで2人は成長し、再び前を向いて進む勇気を得る。ツトム探しの旅は、2人にとっては、見失っていた自分探しの旅でもあったわけだ。彼らが試練を乗り越えた後に迎えたラストも、しみじみとしたものがあって、個人的にはかなり感動させられた。絵柄はクセがあるけど、慣れてくるとさくらもけっこうカワいく見えてくるし、ラブストーリー成分も結構濃厚。苦みは強いけど、それを補って余りあるだけの甘さ、爽やかさもしっかり共存しているのだ。
まあお話としては多少強引なところも、正直いってある。しかし見せ場シーンの構図取りのダイナミックさ、色気のある描線、強い言葉などなど見るべき点は多く、一気に読ませる勢いもある。作者の青山景色は本作が初の単行本ということもあって知名度はまだ低いが、パンチのきいた、インパクトのある作品を描ける新鋭だ。全2巻と手を出しやすい分量なので、ぜひ試してみてほしい。
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